コラム

【第6回公募】事業再構築補助金の新設枠や変更点などを解説

事業再構築補助金の新設枠や変更点などを解説

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響により当面の需要や売り上げの回復が期待しにくい中小企業等が、思い切った事業の再構築に挑戦することを支援するための補助金のことです。事業再構築補助金の第6回公募では、第5回公募までと大幅な変更点があります。本記事では、令和2年度および令和3年度補正予算における、事業再構築補助金第6回公募の新設枠や変更点を解説します。

事業再構築補助金とは

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて業績が下がる企業に対し、経済社会の変化に対応することを目指して挑戦する事業再構築の取り組みを支援する補助金です。新分野への展開や事業転換、業種・業態転換、事業再編などの取り組みを通じて、中小企業等が事業規模を拡大し、中堅・大企業等に成長したり、中堅企業等が市場の新規開拓を行い、高い成長率を実現したりする取り組みの促進を目的としています。
(参考:「事業再構築補助金とは?申請要件やスケジュールなどを解説」)

第6回公募では、売上高等の減少要件緩和に加え、新たな申請類型の創設など、複数の変更点があります。ここからは、事業再構築補助金第6回公募の変更点を解説していきます。

事業再構築補助金第6回公募の変更点

2022年3月28日(月)に公募を開始した「第6回公募」では、大きく分けて7つの変更点があります。順番に見ていきましょう。

変更点①売上高10%減少要件の緩和

補助対象事業の要件について、売上高10%減少要件が緩和されています。第5回公募の要件と比較してみましょう。

内容
第5回公募まで・「2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高がコロナ以前と比較して5%以上減少していること」
・コロナ前後を比較して売上高が10%以上減少していれば、2020年10月以降はコロナ前と比べて5%以上の減少でも申請可
第6回公募から・「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前と比較して10%以上減少していること」のみを要件とする
・コロナ前後を比較して売上高が10%以上減少していれば申請可
※「コロナ以前」とは、2019年または2020年1月~3月までのこと。

この要件緩和により、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で売上が一時下がったものの、現在は回復傾向にある事業者も申請することが可能となりました。

変更点②回復・再生応援枠の新設

引き続き、業況が厳しい事業者や事業再生に取り組む事業者への支援として、第6回公募から「回復・再生応援枠」が新設されました。これに伴い、これまであった緊急事態宣言特別枠は廃止となります。回復・再生応援枠の対象となる事業者や、補助上限額・補助率は以下の通りです。

回復・再生応援枠の対象事業者

通常枠の申請要件に加え、以下の①または②のどちらかを満たす必要があります。

①2021年10月以降のいずれかの月の売上高が対2020年または2019年同月比で30%以上減少していること
②中小企業活性化協議会等から支援を受け再生計画等を策定していること

・補助上限額・補助率

従業員数 補助金額 補助率
5人以下 100万円~500万円 中小企業 3/4
中堅企業 2/3
6人~20人 100万円~1,000万円
21人以上 100万円~1,500万円

補助金額は最大1,500万円まで、補助率を3/4に引き上げて引き続き業況が厳しい事業者を手厚く支援する内容となっています。また、事業再構築指針の要件についても、主要な設備の変更を求めないこととするという条件の緩和もされ、事業再構築に取り組むハードルが下げられました。

変更点③グリーン成長枠の新設

第6回公募から、「グリーン成長枠」という事業類型も新設され、これに伴い卒業枠・グローバルV字回復枠は廃止されています。グリーン成長枠とは、研究開発や技術開発、または人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」において、今後成長が期待できる14分野の課題解決に資する取り組みを行う中小企業等の事業再構築を支援するものです。

グリーン成長戦略「実行計画」の14分野とは、以下の産業です。

分野産業
エネルギー関連産業①洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)
②水素・燃料アンモニア産業
③次世代熱エネルギー産業
④原子力産業
輸送・製造関連産業⑤自動車・蓄電池産業
⑥半導体・情報通信産業
⑦船舶産業
⑧物流・人流・土木インフラ産業
⑩航空機産業
⑪カーボンリサイクル・マテリアル産業
家庭・オフィス関連産業⑫住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業
⑬資源循環関連産業
⑭ライフスタイル関連産業

グリーン成長枠の対象となる事業者や、補助上限額・補助率は以下の通りです。

グリーン成長枠の対象事業者

・補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均5.0%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
・グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の一定割合以上に対する人材育成をあわせて行うこと

補助上限額・補助率

企業補助金額補助率
中小企業100万円~1億円1/2
中堅企業100万円~1.5億円1/3
※返還要件なし

グリーン成長枠では、他の類型と異なり売上高10%減少要件が課されていません。このため、売上が上がっている、または創業したばかりの事業者であっても申請することが可能です。

また、事業再構築補助金では、1事業者につき支援を受けることができる回数は1回に限られますが、グリーン成長枠では、過去に事業再構築補助金が採択された事業者も再度申請することができます(上限:2回)。詳細は「第6回事業再構築補助金公募要領」を確認してください。

変更点④通常枠の補助上限額の縮小

通常枠では、限られた政策資源でより多くの事業者を支援するため、第6回公募から従業員規模に応じて、補助上限額が以下のように引き下げられました。

通常枠の補助金額・補助率

従業員数 補助金額 補助率
20人以下 100~2,000万円 【中小企業】 2/3
(6,000万円超は1/2)
【中堅企業】 1/2
(4,000万円超は1/3)
21人~50人 100~4,000万円
51人~100人 100~6,000万円
101人以上 100~8,000万円

変更点⑤補助対象経費の見直し

その他、運用面の見直しとして、建物費と研修費といった補助対象経費についても以下のように変更されています。

・「建物費」については、原則、改修の場合に限ることとし、新築の場合には、一定の制限を設ける。
・「研修費」については、補助対象経費総額の1/3を上限とする。

建物費においては、「建物の新築に要する経費は、補助事業の実施に真に必要不可欠であること及び代替手段が存在しない場合に限り認められる」との注釈が加えられていることから、新築建物の申請は厳しく審査されることが予想されます。

変更点⑥複数企業等連携型の新設

これまで、事業再構築補助金は事業者単体での申請のみ受け付けていましたが、第6回公募より最大20社まで連携して申請することが可能となりました。複数の事業者が連携して取り組むことにより高い生産性向上が期待できる場合は、他社との連携を視野に入れることも検討しましょう。

変更点⑦事前着手の対象期間の変更

補助金の交付決定前に事業再構築のために使った経費も対象となる「事前着手制度」の対象期日が、これまでの2021年2月15日から、「2021年12月20日以降」に変更されました。これにより、対象となる経費の範囲が変更となっているため、対象外となってしまうものがないか事前に確認しましょう。

その他の細かい変更点

上記で挙げた7つの変更点の他にも細かい変更点があるため、「第6回事業再構築補助金公募要領」で詳細を確認しておきましょう。

リース会社との共同申請

機械装置・システム構築費については、リース料を補助金としてリース会社へ支払うことが可能となります。リース会社との共同申請についての詳細は、「第6回事業再構築補助金公募要領」28ページ以降に記載されています。

第4回公募の採択結果と採択率

事業再構築補助金第4回公募の採択結果と採択率は以下の通りです。

システムで受け付けた件数(応募件数)採択件数採択率
通常枠15,0365,700約38%
大規模賃金引上枠12650%
卒業枠178約47%
緊急事態宣言枠4,2172,806約66%
最低賃金枠391290約74%
合計19,6738,810約44%
(参考:事業再構築補助金事務局「事業再構築補助金第4回公募の結果について」)

第5回公募の採択結果は、2022年6月上旬~中旬頃に発表される予定です。

第6回公募スケジュール

事業再構築補助金事務局のWebサイトでは、第6回公募期間を発表しています。

【第6回公募スケジュール】

項目日程
公募開始2022年3月28日(月)
申請受付2022年5月下旬~6月上旬予定
※応募締切は2022年6月30日(木)

公募要領は改定される可能性もあるため、事業再構築補助金事務局のWebサイトで最新の情報を確認しましょう。

事業再構築補助金の活用で新たなビジネス分野に挑戦

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業等の事業再構築を支援する補助金です。第6回公募から新設枠などの大幅な変更が行われているため、変更点をしっかりと確認し、事前に準備することが必要です。事業再構築補助金を活用し、新たなビジネス分野に挑戦しましょう。