コラム

【分かりやすく解説】FinTech(フィンテック)とは?今後の動向や具体的なサービス例

FinTechの意味をわかりやすく解説

金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動き「FinTech(フィンテック)」。近年、よく耳にするようになりましたが、内容について、実はしっかり理解できていないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、FinTechとはどのような技術で、どの分野で活用されているのかをまとめました。また、今後FinTechのさらなる注目が見込まれる理由についても解説します。

FinTech(フィンテック)とは

FinTech(フィンテック)とは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。

FinTechの意味

金融サービスと情報技術を結びつけたさまざまな革新的な動きを指します。銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を組み合わせることで生まれた、新しいサービスや事業領域などが含まれます。

FinTechが普及する背景

FinTechが普及した背景には、2000年代に入り、急速に向上したコンピュータの処理速度が関係しています。例えば、スマートフォンの処理能力は1999年に販売されていたスーパーコンピュータの30倍以上に進化しました。こうした技術革新により、従来大規模なシステムとネットワークを必要としていた金融サービスに、新たに外部機関が参入しやすくなり、テクノロジーと金融を融合させた新しいサービスが次々と生まれる時代の変革期が訪れました。

さらに近年では、スマートフォンやタブレットPCを身近に、ITリテラシーの高い世代がビジネスの世界に参入しています。それにより、伝統的な金融サービスと異なるFinTechのアイディアの考案が進み、普及を後押ししたと言えるでしょう。

日本国内のFinTech(フィンテック)市場規模と今後の見通し

株式会社矢野経済研究所のレポートによると、2018年度の国内FinTech市場規模は前年度比42.7%増の2,145億円、2022年度には1兆2,102億円にまで拡大することが見込まれています。これは、FinTechにおける国の取組みが活発化していることも要因の一つと考えられ、金融庁の銀行法改正や、経済産業省による生産性向上特別措置法による支援の実施などが背景にあります。このような動きから、今後も市場規模は更に拡大していくと予測されるでしょう。
(参考:株式会社矢野経済研究所「国内FinTech(フィンテック)市場に関する調査を実施(2019年)」)

FinTech(フィンテック)の普及で将来発生し得ること

FinTechが今後も普及していくことで、社会にどんな変革をもたらすのでしょうか。予想される変化をまとめます。

金融機関での大幅な人員削減の実施

FinTechによってオンラインバンキングを導入する金融機関が増えたことで、これまで窓口やATMでしか行えなかった手続きがインターネットでも可能になりました。これにより、店舗の人員削減が進むと言われています。また、RPAと呼ばれる自動化ツールが実用化されたことも、人員削減にさらに拍車をかけています。従来は人手をかけて処理していたルーティンワークを中心に自動化が進み、その分の人員を削減、もしくは別の業務へと配置転換することも可能に。こうした金融機関での人員削減はFinTechの影響と言えるでしょう。

金融のグローバル化促進

FinTechによって、金融のグローバル化が進むとも考えられています。インターネット経由での送金が普及することで、店舗やATMが不要になり、国境超えた金融サービスの提供も容易になります。無論、各国には法制度があり、参入壁は残されていますが、インフラが未発達な途上国や新興国で金融業を行うことも現実的な選択肢となるでしょう。

バーチャル銀行の普及

店舗やATMが不要になることで、リアルな店舗を持たない完全なるバーチャル銀行の実現も可能になります。従来の金融システムは、店舗窓口での取引が中心だったため、こうしたバーチャル銀行の実現は考えられませんでした。コストを抑えた営業スタイルとして、これまでの金融機関と全く異なる運営方法も可能となると予測されます。

金融サービスのパーソナライズ化

また、金融サービスがパーソナライズ化していくことも考えられます。現代では詳細な個人データを取得することが技術的に可能です。収集された膨大なデータはAIによって分析され、一人ひとりに寄り添ったサービスの提供につながっています。これは金融サービスでも同様で、顧客ごとにカスタマイズされた金融サービスの提供が可能になるでしょう。

FinTech(フィンテック)を導入するメリット・デメリット

金融業界に新たなサービスを生んでいるFinTechですが、今後さらなる効果や影響が期待されています。それと同時に、新しいテクノロジーならではのリスクも考えられます。ここからは、FinTech導入によるメリットとデメリットを紹介します。

FinTechによるメリット

FinTechによるメリット一つに、自動化・効率化によるサービスの低コスト化があげられます。FinTechは、テクノロジーを駆使したサービスの自動化や効率化を実現し、従来型の金融サービスと比較して消費者が負担する利用料・手数料を抑えることを可能にしました。

また、IT業界が本格的に金融業界へ参入し始めたことにより、新たな金融商品やサービスが続々と誕生し、消費者の選択肢が広がっていることもFinTechによるもう一つのメリットといえるでしょう。例としては、これまで証券窓口を通してしか扱えなかった株を、誰もがネット経由で売買できるようにした「ネット証券」などがあります。

FinTechによるデメリット

デメリットとしては、安全面でのリスクが懸念されることです。システム自体にセキュリティー上の欠陥がないことを前提に、不正ログイン防止のためのパスワード設定や二段階認証などを用いて、安全面を正しく管理した上でシステムの運用をする必要があるでしょう。

また、FinTechはインターネット環境下での利用が想定されています。そのため、事故やサイバー攻撃などによりインターネットが不通となった場合は、安全にサービスが利用できなくなってしまうリスクも存在しています。

FinTech(フィンテック)の分類と代表的なFinTechサービス

(1)決済・送金

バーコードやQRコードを使ったスマホ決済やクレジットカード決済、アプリユーザー間であれば手数料無料で送金できるPayサービスなどがFinTechを利用した決済・送金サービスです。例えば「Apple Pay」は、2025年までに世界のクレジットカード総取引件数の10%を占めるとも言われるほど、世界中で浸透してきています。

(2)融資・ローン

FinTechでの融資・ローンとは、インターネット上で受けられる融資やローンのサービスを指します。これまで金融機関が行っていた融資と異なり、ネット上の業績や実績などの取引履歴を重視して審査する融資サービスです。審査がインターネット上で完結するため、スピーディに融資を受けることができます。

(3)会計・財務

法人・個人を問わず会計・経理業務をFinTechにより支援するサービスの提供です。クラウド会計ソフトを展開する「freee」は、手入力が必要だった請求書などの取引情報を自動化するだけでなく、入金管理や資金繰りなどの上流工程までサポートしています。

(4)個人資産運用

個人資産運用では「AI投資」が活発化しています。AIを搭載したロボットアドバイザーが資産運用のポートフォリオやリスクを提示し、初心者でも資産運用を始めやすいのが特徴です。

(5)保険

保険分野におけるFinTechは、Insurance(保険)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせて「InsurTech(インシュアテック)」と呼ばれています。AIを利用し業務効率化、健康増進型保険などのサービスを開拓。保険金の用途・内訳をオープンにし、契約者同士がリスクをシェアするという新しいスタイルの保険サービスも登場しています。

(6)PFM(個人財務管理)

PFMは「Personal Financial Management」の略で、主に家計簿アプリなどの個人財務管理サービスを指します。オンライン家計簿サービス「Zaim」は、銀行口座やクレジットカードと連携して財務情報を自動的に集め、家計簿作成のサービスを提供しています。

(7)セキュリティ

FinTechのセキュリティ強化は重要な課題です。サイバー攻撃や不正ログイン対策、生体認証技術を提供するサービスが日々進歩し、FinTechに貢献しています。高精度の画像照合や画像処理技術によって高いセキュリティレベルを保つことができるサービス開発が進み、現在では、複数の金融機関に導入されています。

(8)金融情報

FinTechによる金融情報カテゴリーには、経済情報や物価指数、消費動向などを掲載するプラットフォームが含まれます。膨大なデータやニュースを集め分析し、会社の運営などに役立てています。

(9)仮想通貨

仮想通貨とは、特定の国家が価値を補償していない通貨で、一部の商品やサービスの決済に利用できるデジタル通貨です。FinTechで用いられる技術「ブロックチェーン」を利用して、改ざん不可能な取引データを残すことで価値を補償しています。

(10)クラウドファンディング

クラウドファンディングは、オンライン上で主に個人から資金を集めて事業の達成などを図る仕組みです。商品開発や社会活動支援、不動産運用など目的は多岐にわたり、購入型・寄付型・融資型・投資型の4つに分類されています。国内最大級のクラウドファンディング「CAMPFIRE」は2019年10月、累計流通額が150億円を突破し、今後も成長が加速すると言われています。

(11)ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングとは、融資型クラウドファンディングのことです。資金を調達したい法人と資産運用がしたい個人投資家を結び合わせるオンラインサービスです。アメリカでは、ソーシャルレンディングのプラットフォームを運営する「Lending Club」が、2020年2月にFinTech企業としては初となる銀行の買収を発表。従来よりも低い融資手数料、キャッシュフローの効果的な管理方法を提供し、柔軟性の高い金融サービスを目指しています。

FinTech(フィンテック)に活用するテクノロジーの例

FinTechには、前述のAIやブロックチェーンのほかにもさまざまな最新テクノロジーが使われています。ここからは、FinTechに活用されている5つのテクノロジーの特徴を解説していきます。

コストダウンと安定運用を実現する「ブロックチェーン」

ブロックチェーンは、ネットワーク上の端末が対等な関係でデータを共有し、中央管理者を介さずにシステムを維持する仕組みです。中央サーバーを持たず、端末同士でデータを管理するため、大幅なコスト削減が可能。しかも、データを共有している端末の一部に不具合が生じても、正常に動いている端末同士で安定した運用を続けられるため、サーバーダウンが起こりにくいという特徴があります。

ビックデータの収集に活用する「IoT」

IoTは、パソコンやスマホなどのデバイスだけでなく、自動車や医療機器、電化製品など身の回りのさまざまなモノがインターネットに繋がる仕組みを指します。IoTによって身の回りのモノがインターネットにつながると、膨大かつ多種多様なデータがリアルタイムで蓄積されていきます。データ件数が増えるほど予測の精度は上がるため、顧客体験の改善や新たなサービスの創出につながります。

FinTechでは、個人資産運用・財務管理の的確なサポートはもちろん、生命保険では契約者の運動習慣や食生活、自動車保険では運転技術や車両の状態からリスクを測定し、保険料をディスカウントする特典も実施されています。そのサービスの実現には、IoTで収集されたビッグデータが欠かせません。

ビッグデータの解析・管理を行う「AI(人工知能)」

AI(人工知能)は、人間の認識・推論などの能力をコンピューターで可能にするための技術です。IoTで収集した膨大な量のデータを解析・管理するのに役立ちます。FinTechでは、投資や資産運用、保険のプランについて、パーソナライズしたアドバイスが可能なロボアドバイザーのほか、顧客のニーズに答えるチャットボット、接客型サイネージなどに取り入れられています。

ユーザーの利便性を向上する「API」

APIは「Application Programming Interface」の略で、コンピューター内やWEB上のアプリケーションソフトと、外部のアプリケーションの接点を作る仕組みのことです。Googleアカウントを利用して、Google以外のアプリにログインできる機能はAPIの一例です。APIによってアプリを連携すると、アカウントを新たに作成する煩わしさがなくなり、UXの向上を図ることができます。企業にとっては、ユーザーを獲得しやすくなると同時に、認証情報の管理・保護コストを削減できるというメリットもあります。

セキュリティの効果を高める「生体認証」

生体認証は、指紋や静脈などの身体的特徴をもとに本人確認する認証技術のこと。従来の暗証番号やパスワードといったセキュリティに比べると安全性が高く、個人情報漏洩やスキミング防止に高い効果を発揮します。現在、生体認証はさまざまなところで活用されており、決済Payがいち早く普及した中国では、現在顔認証によるイベント入場や公共料金の支払い、網膜認証による住宅ローン契約時の本人確認などが始まっています。

FinTech(フィンテック)の拡大がDX促進につながる

FinTechは、さまざまな分野で展開を進め金融ビジネスのみならず、生活の端々にも大きな変革を起こしています。FinTechの拡大は、世界中でDX促進につながる重要なファクターとしても注目されるでしょう。ビジネスを行う上では、FinTechの意義を正しく理解し、今後の動向にも意識を向けてみてはいかがでしょうか。