地方創生テレワーク交付金の要綱や取り組み事例を解説
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地方創生テレワーク交付金は、サテライトオフィスなどの施設を整備・運営する地方公共団体の取り組みを支援するための施策です。感染症予防や働き方改革の観点からもテレワークを導入する企業が増加しており、テレワークを活用して地方で仕事をするなどの新たな働き方も注目されています。本記事では、地方創生テレワーク交付金の要綱や交付対象となる事業の取り組み例などを紹介します。
内閣府が推進する地方創生テレワークとは
地方創生テレワークとは、地方の活性化や東京圏の一極集中回避を図るため、内閣府地方創生推進室が行っている取り組みです。内閣府の資料によると、近年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、働き方改革によりテレワークを導入する企業は増加。中でも東京23区は地方圏よりもテレワーク実施率が高くなっており、現在の仕事を変えずに地方移住してテレワークを活用する働き方へも関心が高まっていることがわかります。
このような状況を背景に「地方創生テレワーク」を推進する取り組みの一環として、地方におけるサテライトオフィスの整備等を支援する「地方創生テレワーク交付金」が創設されました。
(参考:内閣府地方創生推進室「令和2年度補正予算(第3号)地方創生テレワーク交付金について」)
【令和2年度補正予算】地方創生テレワーク交付金の要綱
地方創生テレワーク交付金は、自治体や民間の運営施設としてサテライトオフィス等を整備することを支援し、テレワークによる企業の地方進出や移住推進を目的としています。ここからは、地方創生テレワーク交付金の要綱を解説していきます。
申請タイプ
地方創生テレワーク交付金の申請タイプは「高水準タイプ」と「標準タイプ」の2つがあり、申請タイプによって申請要件や補助率、審査方法が異なります。申請する際は、当該事業年度分とその後の取り組み3カ年分を記した「地方創生テレワーク推進実施計画」を策定するとともに、具体的な重要業績評価指標(KPI)の設定が必要です。
高水準タイプ
高水準タイプは、目標とする進出企業数や移住者数などを高い水準で設定するとともに、企業進出・滞在・移住を創出する取り組みの自立性が高く、官民協働、政策間連携などの先駆的要素が含まれる事業であることが求められます。
申請要件 | 以下の通りKPIを設定すること (1)2024年度末のサテライトオフィス等施設を利用する企業数を設定し、そのうち、所在都道府県外の企業が3社以上あること (2)2024年度中のサテライトオフィス等施設の利用者数を設定し、そのうち、所在都道府県外の利用者数の割合が5割以上であること ③ 事業開始から2024年度末までの移住者数がサテライトオフィス等施設の所在する市町村の人口の0.01%以上であること |
補助率 | 3/4 |
審査方法 | 有識者による審査 |
標準タイプ
標準タイプは、目標とする進出企業数や移住者数等について適切な水準を設定するとともに、企業進出・滞在・移住を創出する取り組みの自立性を有する事業であることが求められます。
申請要件 | 以下の通りKPIを設定すること ①2024年度末のサテライトオフィス等施設を利用する企業数を設定し、そのうち、所在都道府県外の企業が1社以上あること ② 2024年度中のサテライトオフィス等施設の利用者数を設定し、そのうち、 所在都道府県外の利用者数の割合が3割以上であること ③ 事業開始から2024年度末までの移住者数を設定すること |
補助率 | 1/2 |
審査方法 | 事務局による審査 |
交付対象者
交付対象者は以下の通りです。
(1)東京圏(東京都、埼玉県、千葉県及び神奈川県)外の地方公共団体 (2)東京圏内の条件不利地域を含む市町村 (3)東京圏内の都県のうち②の域内に事業を限定して行う都県 |
「(2)東京圏内の条件不利地域を含む市町村」に該当する地域の詳細は、「令和2年度補正予算(第3号)地方創生テレワーク交付金について」を確認しましょう。
対象事業
地方創生テレワーク交付金は、地方公共団体施設の整備に加えて民間施設の整備や地方への進出企業の支援も対象となります。対象事業の内容は以下の通りです。
対象となる要素事業 | 内容 |
①サテライトオフィス等整備事業 (自治体運営施設整備等) | 地方公共団体が、サテライトオフィス等を開設、プロモーション、ビジネスマッチング等のプロジェクトを推進する |
②サテライトオフィス等開設支援事業 (民間運営施設開設支援等) | 地方公共団体が、サテライトオフィス等運営事業者・共同事業体の施設について、その開設を支援、プロモーション、ビジネスマッチング等のプロジェクトを推進する |
③サテライトオフィス等活用促進事業 (既存施設拡充促進) | 地方公共団体が、区域外からの進出企業・滞在者・移住者による既存のサテライ トオフィス施設利用を促進するため、テレワーク関連設備等の導入支援、プロモー ション、ビジネスマッチング等のプロジェクトを推進する |
④進出支援事業(利用企業助成) | 地方公共団体が、事業の対象となるサテライトオフィス等を利用する区域外の企業進出を支援する |
また、「①サテライトオフィス等整備事業」と「②サテライトオフィス等開設支援事業」を組み合わせて申請できる他、「④進出支援事業」は「①サテライトオフィス等整備事業」・「②サテライトオフィス等開設支援事業」「③サテライトオフィス等活用促進事業」との組み合わせ申請が可能です。
対象経費
対象となる経費は大きく分けて「施設整備・運営」「施設整備・運営以外のソフト経費」の2種類です。それぞれの対象事業ごとにどのような経費が交付対象かが異なります。
■施設整備・運営
対象事業 | ①サテライトオフィス等整備事業 (自治体所有施設整備等) | ②サテライトオフィス等開設支援事業 (民間所有施設開設支等) |
対象経費 | ・施設整備費 ・通信環境整備費 ・什器・機器導入費 ・施設運営管理委託費など | ・施設整備支援費 ・通信環境整備支援費 ・什器・機器導入支援費 ・施設運営支援費など |
■施設整備・運営以外のソフト経費
対象事業 |
①サテライトオフィス等整備事業 (自治体所有施設整備等) |
②サテライトオフィス等開設支援事業 (民間所有施設開設支等) |
③サテライトオフィス等 活用促進事業 (既存施設等活用等) |
④進出支援事業 |
---|---|---|---|---|
対象経費 |
・プロモーション経費 ・ビジネスマッチング・セミナー経費 ・企業の採用活動経費(インターン、説明会) ・オンライン会議用ブース料(リース等) ・その他外注費 |
・進出支援経費 |
交付上限額
交付の上限額も、対象事業ごとに異なります。各事業ごとの上限額は以下の通りです。
■「①サテライトオフィス等整備事業」「②サテライトオフィス等開設支援事業」
整備する施設の収容可能人数(1施設あたり) | 20人未満 | 20人以上50人未満 | 50人以上 |
施設整備・運営 | 3,000万円 | 4,500万円 | 9,000万円 |
施設規模別の上限 | 3施設 | 2施設 | 1施設 |
1団体における施設数の上限 | 合計3施設 |
施設整備・運営以外のソフト経費 | 1団体につき最大1,200万円 |
■「③サテライトオフィス等活用促進事業」
施設整備・運営以外のソフト経費 | 1団体につき最大1,200万円 |
■「④進出支援事業」
進出支援経費(返還制度あり) | 進出支援金 最大100万円/社 |
第1回採択結果
地方創生テレワーク交付金第1回の採択件数は、全体で138件となりました。そのうち高水準タイプは51件、標準タイプは87件でした。以下に交付事業費の内訳や対象事業ごとの団体数も見ていきましょう。
■タイプ別の採択件数と交付事業費
高水準タイプ(補助率3/4) | 標準タイプ(補助率1/2) | 全体 | |
件数 | 51件 | 87件 | 138件(道府県14件、市町村124件) |
交付対象事業費(億円) | 28 | 38 | 66 |
国費ベース (億円) | 21 | 19 | 40 |
■事業別団体数
要素事業 | ①サテライトオフィス等整備事業 (自治体運営施設整備) | ②サテライトオフィス等開設支援事業 (民間運営施設開設支援) | ③サテライトオフィス等活用促進事業 (既設拡充・促進) | ④進出支援事業 (利用企業助成) |
団体数 | 56 | 63 | 30 | 67 |
対象数 | 72施設 | 114施設 | 79施設 | 271社 |
交付対象事業における取組事例
ここでは、交付対象事業における実際の取り組み事例を3つ紹介します。
香川県 小豆島町
香川県小豆島町では、島内の既存レジャー施設「小豆島ふるさと村ワインハウス」をサテライトオフィスへ改修する整備事業を申請しました。国民宿舎やファミリーロッジなどの滞在施設が近接する海が見えるロケーションを生かし、宿泊も可能なワークスペースとなる見込みです。島内にはすでに30名程度のテレワーカーが居住しており、先行居住者との交流を通してさらなる移住者の増加が期待されています。
静岡県 焼津市
静岡県焼津市の焼津漁協では、鉄筋2階建ての「港の倉庫(54戸)」をテレワーク施設や交流拠点として改修する支援事業を申請。54戸の空間をそのまま改修することで、プライバシーを確保した多数のワークスペースを提供可能にする計画です。また、コミュニティスペースを整備し、地域課題解決のワークショップやモノづくり体験などを提供して地域の交流を深めていくそうです。
新潟県 糸魚川市
新潟県糸魚川市では、美山公園集会施設をサテライトオフィスへ改修する整備事業の他、民間シェアオフィスの開設支援事業などを申請しました。市内外のさまざまな事業者がすでに「美山公園活用プロジェクト」を結成していたため、継続的な推進が期待できることが見込まれています。また、外部の専門家の協力を継続的に受けられる体制を構築しているそうです。
サテライトオフィス運営効率化には「むじんLOCK」
地方創生テレワーク交付金は、サテライトオフィス等の開設・整備を支援する事業です。多様な働き方が広がる中で、今後もサテライトオフィスやコワーキングスペースの需要は増加していくことが考えられます。
株式会社コミュニティコムが提供している「むじんLOCK」は、サテライトオフィスやコワーキングスペースなどの施設の入退室管理や利用者への請求などを一元管理できる、スマートロック連携課金決済システムです。サテライトオフィスのセキュリティ向上に加え、運営の効率化にもつながります。サテライトオフィスを開設・整備する際には、「むじんLOCK」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。