コラム

サテライトオフィス設置等補助事業とは。対象者や補助要件などを解説

サテライトオフィス設置、補助事業とは

東京都が実施している「サテライトオフィス設置等補助事業」。都内の市町村でサテライトオフィスを新たに設置し運営したい民間事業者を対象に、必要経費などを補助する事業です。近年、ワークスタイルの変化に伴ってテレワークを導入する企業も増加しており、このような補助金を活用したい企業などもあるのではないでしょうか。本記事では、サテライトオフィス設置等補助事業の補助要件や、令和2年度の採択事例などを解説します。

テレワークの普及に伴い、サテライトオフィスを導入企業は増加傾向

近年では、新型コロナウイルス感染症拡大の影響やワークスタイルの多様化から、テレワークを導入する企業が増えています。一方で、在宅では通信環境がよくなかったり、仕事専用の部屋がなかったりして働く環境を整えることが難しい場合もあるでしょう。このような理由から、本来のオフィスよりも通勤しやすい場所にサテライトオフィスを設置する企業も増加しています。多様化する働き方へ対応し、人材確保をするためにも、今後もサテライトオフィスを導入したい企業は増えていくことが予測されます。
(参考:総務省「地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査結果」

サテライトオフィス設置で補助金を申請できる自治体も

サテライトオフィスの開設が増加する中、サテライトオフィスの設置に対して補助金制度を設ける自治体も複数あります。例えば、和歌山県では、ICT企業誘致の一環としてサテライトオフィスの賃借補助などを実施。北海道千歳市では、千歳市内にサテライトオフィスを設置する企業に対して賃料を補助する「千歳市サテライトオフィス等設置促進事業補助金」を実施しています。企業誘致などの目的でサテライトオフィス設置に対して補助金制度を設ける地方自治体の後押しも、増加している背景にあると言えるでしょう。

東京都サテライトオフィス設置等補助事業とは

地方での企業誘致の動きが活発化する中、東京都でも、サテライトオフィスの設置が少ない23区外を中心に、企業が新たに開設するサテライトオフィスの整備費や運営費を補助する「サテライトオフィス設置等補助事業」を行っています。

令和3年度は、企業や団体などを対象とした「民間コース」と、区市町村などを対象とした「行政コース」が設けられています。今回は、サテライトオフィスの設置を検討している企業などに向けて、「民間コース」について解説します。なお、「民間コース」には「サテライトオフィス設置コース」と、「ミニワーケーションコース」の2つのコースがあり、それぞれ対象者が異なります。それぞれの補助要件を見ていきましょう。

サテライトオフィス設置コース

サテライトオフィス設置コースは、都内の市町村部で新たに複数の企業の従業員が利用できる共用型のサテライトオフィスを設置する民間事業者を対象としています。また、補助率や補助限度額は、必要な要件を満たす場合や設置する地域によって異なります。
(参考:東京都「令和3年度サテライトオフィス設置等補助事業民間コース募集要項」

補助率・補助限度額・補助期間

サテライトオフィス設置コースの基本的な補助率・補助限度額・補助期間は以下の通りです。

補助率補助限度額補助対象期間
整備・改修費1/21,500万円交付決定を受けた年の年度末まで
運営費1/2補助対象期間1年ごとに600万円サテライトオフィスの工事完了日の翌日から2年間

また、補助事業者がサテライトオフィスに保育所(認可・認証・企業主導型保育所のいずれか)を併設したり、年間を通じてサテライトオフィス利用者のスキルアップなどを図るための事業を実施したりする場合は、補助率と補助限度額は以下のように優遇されます。

補助率補助限度額
整備・改修費2/32,000万円
運営費2/3補助対象期間1年ごとに800万円

都内の市町村部の中でもサテライトオフィス整備推進地域に設置した場合にも、補助率と補助限度額が優遇されます。

補助率補助限度額
整備・改修費2/32,000万円
運営費1/2補助対象期間1年ごとに600万円

なお、サテライトオフィス整備推進地域については募集要項で確認しましょう。
(参考:東京都「令和3年度サテライトオフィス設置等補助事業民間コース募集要項」

補助対象経費

サテライトオフィス設置コースの補助対象経費は<整備・改修費>と<運営費> の2つです。それぞれ経費の内容は以下の通りです。

<整備・改修費>

経費区分内容
工事費事業計画を実施するために必要な整備・改修工事に係る経費
施工監理費施設の整備・改修工事に関して必要な施工監理費
建物・施設取得費施設運営に必要な建物・施設・建物付属設備などの固定的施設の購入経費
賃借料施設運営事業者が、補助対象事業の遂行に必要な不動産を、補助期間を通じて都内に継続的に借りる場合に支払われる賃借料(共益費を含む)
備品費施設の整備・改修を行う際に必要となる備品の購入費(購入時の配送費含む)
広告費施設を広報するための経費

<運営費>

経費区分内容
人件費施設に直接従事するスタッフなどの従業者に対して支払われる給与や賃金(パート・アルバイトを含む)
備品費施設の運営に必要な備品の購入費(購入時の配送費含む)
賃借料施設の運営に必要な備品・不動産について、補助対象期間を通じて継続的に賃借する経費
建物管理委託費施設の管理に必要な維持管理業務を外部に委託する経費
広告費施設を広報するための経費

ミニワーケーションコース

ミニワーケーションコースは、東京都西多摩地域及び島しょ地域などで、新たにワーケーションに活用するためのサテライトオフィスを設置する民間事業者が対象です。また、補助の対象となる経費は、<整備・改修費>のみ対象となります。

補助率・補助限度額・補助期間

ミニワーケーションコースの補助率・補助限度額・補助期間は以下の通りです。

補助率補助限度額補助機関
整備・改修費2/3133万円交付決定を受けた年の年度末まで

補助対象経費

ミニワーケーションコースの補助対象経費は以下の通りです。

<整備・改修費>

経費区分内容
工事費事業計画を実施するために必要な整備・改修工事に係る経費
施工監理費施設の整備・改修工事に関して必要な施工監理費
備品費施設の整備・改修を行う際に必要となる備品の購入費(購入時の配送費含む)
広告費施設を広報するための経費

補助事業の審査の流れ

サテライトオフィス設置等補助事業の審査は、以下のようなスケジュールで行われます。現地調査には建築士などの専門知識がある方の同席が必須となるため、事前に準備しておきましょう。

①申請書提出
②書類審査
③現地調査
④面接審査
⑤総合審査
⑥交付決定

【令和3年度は募集終了】令和2年度採択事業者

2022年3月現在、令和3年度の募集は終了しています。令和2年度のサテライトオフィス設置等補助事業の採択事業者は12事業者ありました。

採択事業者設置場所
大成有楽不動産株式会社三鷹市
株式会社テンポアップ立川市
株式会社ロア町田市
京王電鉄株式会社府中市、八王子市 ※2施設採択
株式会社まちづくり立川立川市
Ascent Business Consulting株式会社武蔵野市
株式会社麦酒企画狛江市
株式会社ブックマークス町田市
狛江ラジオ放送株式会社狛江市
一般社団法人フラットデザイン武蔵野市
株式会社Axia works立川市
株式会社マイナビ武蔵野市

令和2年度に採択された事業者の中から以下の3事業者について、開設したサテライトオフィスの事例を紹介します。

京王電鉄

京王電鉄は、2021年3月下旬に府中市と八王子市に会員制のサテライトオフィス「KEIO BIZ PLAZA」を開設しました。駅直結で利便性の高い立地に加え、QRコード式の入退室管理を導入するなどセキュリティ面でも安心な施設です。

株式会社ブックマークス

株式会社ブックマークスは、2021年3月に会員制のコミュニティ型勉強スペース「勉強カフェ町田マルイスタジオ」を開設しました。町田駅直結の商業施設「町田マルイ」の1階フロアに立地し、学生や社会人が利用しやすい空間を提供しています。オンラインサービスを活用して利用者同士をつなげるマッチングサービスや、利用者の仕事や勉強の習慣化支援プログラムなども行っています。

株式会社麦酒企画

2021年4月に商業施設「小田急マルシェ喜多見」内に開設した「サテライトオフィス狛江City」は、レストラン併設のサテライトオフィスです。オフィス内ではレストランのメニューを注文することもでき、「職×食×住」近接のワークライフスタイルを提供しています。

サテライトオフィス設置等補助事業の活用で、より効率的なオフィス運営を

サテライトオフィス設置等補助事業(サテライトオフィス設置コース)は、オフィスの運用費も補助対象となります。株式会社コミュニティコムが提供しているスマートロック連携課金決済システム「むじんLOCK」の導入も、サテライトオフィス設置等補助事業を活用することが可能です。「むじんLOCK」は、スマートロックと連携した非接触型の入退室管理システムで、ドアの解錠や施錠、入退室履歴の管理やサテライトオフィスの予約、利用料金の請求などを一括管理することができます。補助金の活用も検討しながら、サテライトオフィス運営の効率化を目指してみてはいかがでしょうか。