【わかりやすく解説】IT導入補助金とは?2021年度の制度内容と2022年度からの変更点
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中小企業や小規模事業者が活用できる補助金の一つである、「IT導入補助金」。IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者が自社の課題やニーズにあったITツールを導入する際の経費を補助するもので、ITツール導入による企業の「業務効率化・売上アップ」を支援する制度です。今回は、中小企業の経営改善の大きな味方となりうる「IT導入補助金」について、具体的にどういった補助金制度なのかを、わかりやすく解説していきます。また、2022年度の変更点についても紹介しますので、IT導入補助金の活用を検討している中小企業の方はぜひ参考にしてください。
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際に活用することができる補助金です。令和2年度第3次補正予算では、これまでの通常枠(A・B類型)に加え、新型コロナウイルス感染症対策のための低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)が追加されました。
(参考:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金 2021」、「IT導入補助金2021 公募要領 通常枠(A・B 類型)」、「IT導入補助金2021 公募要領 低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D 類型)」)
IT導入補助金の目的
通常枠(A・B類型)
IT導入補助金の通常枠(A・B類型)は、中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する経費の一部を補助に活用することができます。自社の経営課題や新たなITツールを導入することで、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ることを目的としています。
低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)
IT導入補助金の低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)は、新型コロナウイルス感染症の流⾏により、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの転換に向けて、労働生産性の向上とともに、感染リスク対策として対人接触の機会を低減する業務変革に対して、通常枠(A・B類型)よりも補助率を引き上げて優先的に支援するものです。そのため、通常枠(A・B類型)とは、制度等に一部異なる点があります。
IT導入補助金を活用できる補助対象や類型ごとの補助率
IT導入補助金の対象事業者(個人事業主を含む)
IT導入補助金の対象事業者は、中小企業・小規模事業者等で個人事業主を含みます。公式サイトに記載された要件に該当していることが条件で、詳細は「補助対象となる事業者」に記載されています。
中小企業・小規模事業者等とは
対象事業者の要件の一つである中小企業・小規模事業者等について、業種、組織形態、従業員数などについてまとめると、以下の表のようになります。
表1【中小企業】
※資本金・従業員規模の一方が表1記載以下の場合対象(個人事業を含む)
業種 | 資本金 | 従業員(常勤) |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及チューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
表2【その他の法人】
業種・組織形態 | 資本金 | 従業員 |
---|---|---|
医療法人、社会福祉法人、学校法人 | ー | 300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | ー | 100人 |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
特定非営利活動法人 | ー | 主たる業種に記載の従業員規模 |
表3【小規模事業者】
業種分類 | 従業員(常勤) |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
対象となる事業
通常枠(A・B類型)
以下の要件を満たす事業が通常枠(A・B類型)の補助対象です。
1.日本国内で実施される事業であること。
2.IT導入支援事業者が登録するITツールを導入する事業であること。
通常枠(A・B類型)はそれぞれ補助の内容が異なり、A類よりB類のほうが補助の内容が手厚くなっています。
A類型 | B類型 | |
---|---|---|
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
補助の上限額 | 150万円 | 450万円 |
補助の下限額 | 30万円未満 | 150万円未満 |
プロセス数(※) | 1以上 | 4以上 |
該当する条件 | A・B類型ごとのプロセス要件を満たした上で、労働生産性の向上に役立つITツールであること | A・B類型ごとのプロセス要件を満たした上で、労働生産性の向上に役立つITツールであること 別途指定された「賃上げ要件」を満たすこと |
低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)
低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)では、対象となる事業について、次のように設定されています。
1.補助対象事業の考え方
補助事業者が新型コロナウイルスの影響を受け、業務の非対面化に資するITツール(非対面化ツール)を導入し、労働生産性を向上させる取り組みのうち、「申請区分」のITツールの要件を満たすもの。
2.補助対象事業の拡大について ※遡及(さかのぼり)申請の追加
交付決定後に実施する事業に加え、特例として遡及(さかのぼり)申請のケースも、補助対象事業として認める。
C・D類型では「C類型(低感染リスク型ビジネス類型)」と、「D類型(テレワーク対応類型)」に区別され、補助の内容が以下のように区別されます。
C類型 (低感染リスク型ビジネス類型) | D類型 (テレワーク対応類型) | |
---|---|---|
補助率 | 2/3以内 | 2/3以内 |
補助の上限額 | 450万円 | 150万円 |
補助の下限額 | 30万円未満 | 30万円未満 |
プロセス数(※) | 2以上 | 2以上 |
該当する条件(A・B類型の要件に加えて満たす必要のある条件) | 複数のプロセス間で情報連携されるツールを導入し、複数のプロセスの非対面化や業務の更なる効率化を行うことを目的とした事業 | テレワーク環境の整備に資するクラウド対ツールを導入し、複数のプロセスの非対面化を行うことを目的とした事業 |
また類型の判別には、「公募要領」または「交付申請の手引き」にある「類型判別チャート」を利用し確認することができます。
補助対象のITツールとIT導入支援事業者
補助対象経費となるのは、事務局である「サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局」に登録されたITツールの導入費用のみが該当します。そのため、補助金を利用する事業者は、登録されているIT導入支援事業者への相談を行い、適切なITツールを選択し、申請する必要があります。なお、「IT導入支援事業者」は、補助事業を申請者とともに実施する共同事業者(=パートナー)という位置づけです。事務局より採択を受けている「IT導入支援事業者及びITツール」は公式サイトの「IT導入支援事業者・ITツール検索」で確認できます。
IT導入補助金の対象となるITツール
補助の対象となるITツールは、大分類Ⅰ「ソフトウェア」、大分類Ⅱ「オプション」、大分類Ⅲ「役務」の3つのいずれかに分類されます。また、各大分類内は下記図のとおり9つのカテゴリーに分類されます。
大分類Ⅰ「ソフトウェア」 | 大分類Ⅱ 「オプション」 | 大分類Ⅲ 「役務」 | |
---|---|---|---|
小分類 | カテゴリー1:単体ソフトウェア カテゴリー2:連携型ソフトウェア ※C類型申請用 | カテゴリー3:拡張機能 カテゴリー4:データ連携ツール カテゴリー5:セキュリティ | カテゴリー6:導入コンサルティング カテゴリー7:導入設定・マニュアル作成・導入研修 カテゴリー8:保守サポート カテゴリー9:ハードウェアレンタル ※C・D類型申請用 |
また、上記の大分類Ⅰ「ソフトウェア」のカテゴリー1、カテゴリー2に該当するソフトウェアについては、プロセス(※)が設定されています。ソフトウェアを導入したいと考える場合、基本的には下記の表をもとに「プロセス名」の役割をいくつか担うソフトウェアの選択が必要です。また、申請する類型ごとに必要なプロセス数は異なります。
種別 | Pコード | プロセス名 | |
---|---|---|---|
業務プロセス | 共通プロセス | 共P-01 | 顧客対応・販売支援 |
共P-02 | 決済・債権債務・資金回収管理 | ||
共P-03 | 調達・供給・在庫・物流 | ||
共P-04 | 会計・財務・経営 | ||
共P-05 | 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス | ||
業種特化型プロセス | 各業種P-06 | 業種固有プロセス | |
汎用プロセス | 汎P-01 | 汎用・自動化・分析ツール (業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる業務プロセスに付随しない専用のソフトウェア) |
IT導入補助金の申請・手続きの流れ
ここからは、 IT導入補助金の申請・手続きの流れについてわかりやすく解説します。
①IT導入補助金事業について理解する
まずは、公式サイトや公募要領を確認し、補助事業について理解を深めましょう。
②IT導入支援事業者を選定し、ITツールを選択する
交付申請の事前準備として、自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定します。
③「gBizIDプライム」アカウントの取得と「SECURITY ACTION」を実施する
交付申請には「gBizIDプライム」アカウント(ID・パスワード等)が必要です。アカウントID発行には、約2週間かかりますので、早めに申請手続きをします。
④ 交付申請を行う
IT導入支援事業者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。IT導入支援事業者から招待された「申請マイページ」にて、必要な情報の入力・書類添付を行い、交付申請を行います。
⑤交付決定後、補助事業を実施する
事務局から交付決定を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払い等を行い、補助事業を実施します。
⑥事業実績報告と補助金交付手続きをする
補助事業の完了後、IT導入支援事業者の確認及び必要情報の入力を得て、事業実績報告を提出します。
IT導入補助金2021の申請は締め切り済。採択結果と採択率は?
今年度のIT導入補助金2021の申請は、5次締め切りである2021年12月22日を以て終了しました。2022年度の申請スケジュールについては公式サイトからの情報公開を待ちましょう。
なお、IT導入補助金2021の「申請件数」と「採択件数」、「採択率(小数点以下四捨五入)」の推移は以下の通りです。
【IT導入補助金2021の採択実績】
A類型 | B類型 | C類型 | D類型 | ||
---|---|---|---|---|---|
1次締切分 交付決定日 (6月15日) |
申請数 | 2,373 | 92 | 3,249 | 797 |
交付決定数 | 1,317 | 48 | 1,908 | 444 | |
1次採択率 | 55% | 52% | 59% | 56% | |
2次締切分 交付決定日 (8月31日) |
申請数 | 4,542 | 157 | 9,664 | 1,696 |
交付決定数 | 2,507 | 53 | 5,869 | 1,036 | |
2次採択率 | 55% | 34% | 61% | 61% | |
3次締切分 交付決定日 (10月29日) |
申請数 | 2,840 | 83 | 7,622 | 1,273 |
交付決定数 | 1,648 | 36 | 4,656 | 782 | |
3次採択率 | 58% | 43% | 61% | 61% | |
4次締切分 交付決定日 (12月15日) |
申請数 | 1,799 | 51 | 6,158 | 830 |
交付決定数 | 1,013 | 25 | 3,719 | 554 | |
4次採択率 | 56% | 49% | 60% | 67% | |
5次締切分 交付決定日 (2022年1月26日) |
申請数 | 1,808 | 41 | 6,074 | 877 |
交付決定数 | 1,042 | 13 | 3,595 | 560 | |
5次採択率 | 58% | 32% | 59% | 64% |
(参考:一般社団法人 サービスデザイン推進協議会「交付決定事業者一覧」)
IT導入補助金2022の変更点の概要
2022年1月に中小企業庁が公開した資料によると、「IT導入補助金2022」では、インボイス方式への対応も見据えた会計ソフト等の導入を促進するため、補助率の引き上げ、クラウド利用料の2年分の補助、PC等のハード購入補助などを実施し、企業間取引のデジタル化を強力に推進していく予定のようです。補助金額の上限は350万円になる見込みで、補助率は一部3/4に引き上げられる予定です。IT導入補助金2022の利用を検討されている方は、2022年度の公募について最新情報をチェックし、計画的に事前準備を行いましょう。(参考:経済産業省「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)令和3年度補正予算の概要」)
むじんLOCKはIT導入補助金対象のITツール
株式会社コミュニティコムは、 IT導入補助金2021のIT導入支援事業者として採択されており、提供しているスマートロック連携課金決済システム「むじんLOCK」の導入に「IT導入補助金」を活用することも可能です。むじんLOCKは、ドアに設置したスマートロックと連携する非接触型のサービスで、登録ユーザーの入退室記録に基づいた、スペースの利用料金の請求から決済・入金までの情報処理をコンピューターが実行、一括管理を可能にします。
今回の記事を参考に、IT導入補助金を活用し、労働生産性の向上に役立つITツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。