コラム

【活用事例付き】IoTのメリット・デメリットと普及の背景を紹介

IoTのメリット・デメリット

近年、さまざまなシチュエーションでIoTが活用されています。企業においても自社の効率化や新たなサービス創出を目的に、IoT導入を検討するところが増えています。本記事では、IoTとは何か。IoT普及の背景、導入する際のメリット・デメリット、導入事例などをご紹介します。

 IoTとは

IoTとは、「Internet of Things」の略称で「モノのインターネット」と呼ばれています。
身の回りのあらゆるモノをインターネットにつなげ、サーバーやクラウドと接続し相互に情報交換をする仕組みです。IoT技術により、これまで取得できなかったモノ・コトの情報を取得できるようになったことで、より価値の高いサービスを作り出すことにつながると期待されています。

IoTが普及する背景

 IoT導入におけるコストの低下

IoTが普及する背景の一つは、導入コストの低下です。コストが下がった理由には、大きく2つの要因があると言われています。1つ目は、需要の拡大に伴い、データを取得するセンサー機器や通信モジュールなどの価格の低下が進んでいること。2つ目は、LPWAと呼ばれる低消費電力で長距離通信ができる通信サービスが拡充されたことです。 これにより、IoT導入における障壁が下がり、活用の場面が広がりました。

IoT機器の縮小化による活用場面の拡大

コストの低下とともに、機器の縮小化もIoTの普及に影響しています。機器が小型化したことで、時計型のウェアラブルデバイスとしての利用や、モノの移動追跡も容易になりました。導入しやすくなったことで、さまざまな場面で活用が進んでいます。

スマートフォン需要の拡大によるサービスの増加

スマートフォンには、GPSや電子コンパス、加速度センサー、ジャイロセンサー、照度センサーなど、いくつものセンサーが内蔵されています。つまり、最も身近なIoT機器ともいえるでしょう。スマートフォンを多くの人が所持するようになったことで、スマートフォンを活用したIoTサービスが数多く登場しています。

IoT技術を導入するメリット・デメリット

IoTを導入することで得られるメリットや、デメリットとして指摘されていることを紹介します。

まず、IoT導入による主なメリットを3つ紹介します。

日常生活の利便性が向上する

IoTによりモノがインターネットに接続されることで、日常生活の利便性が向上します。例えば、エアコンなどの遠隔操作は、多くの人が身近に感じられるIoT技術での利便性向上といえるでしょう。IoTは日常生活のみならず、工業、農業、医療、運輸などあらゆる分野での応用が期待でき、生活や社会をより便利に快適に変える大きな可能性を秘めています。

企業の効率化が進む

企業はIoT導入により、ムダなプロセスを省いたり、適切な人員配置を行うなど、業務の効率化を進めることができます。例えば販売業では、購入情報を元に、消費者ニーズを細かく予測し需要・供給の最適化を図ることで、不要在庫を持たない経営を可能にするでしょう。工場の生産ラインでは、稼働状況を見える化し最適化された生産体制を維持することが可能になります。

新たなサービス開発やビジネス機会につながる

IoT製品から取得した膨大なデータを分析・活用することによって、今まで気づかなかった需要を把握できるというメリットがあります。消費者の隠れたニーズや、従来とは異なる利用用途、製品の改善余地など、IoTによる新しい物事の捉え方により新たなサービス開発やビジネス機会につながる可能性が高まります。

IoT導入のデメリット

一方、IoT導入には次のようなことがデメリットや課題になると言われています。

セキュリティリスクが高くなる

あらゆるモノがインターネットと接続するようになると、ハッキングや情報漏えいといった、セキュリティリスクが高くなります。そのため、IoTを導入する際はセキュリティ対策を十分考慮する必要があります。

通信障害時にダメージを受けやすい

IoT導入が進むと、通信障害が発生した時に受ける損害が大きくなることが懸念されます。電波の混線での誤作動や、通信量の増大による通信遅延が起きることも指摘されています。

IoTを活用できるIT人材が不足する

昨今、IT市場やWeb業界の急成長により、IT人材の不足が懸念されていますが、中でもIoTを担う先端IT人材がこの先更に不足していくと言われています。またIoTでは大量のデータを分析する必要があるため、データ分析に詳しい人材も求められます。IoTを活用した新たなサービスや機器を開発するためには、IT人材を育てることが必要とされています。

IoT技術によって実現できること

IoTの導入が進むと、具体的にどのようなことが実現できるのでしょうか。

モノの状態の把握

離れた場所にあるモノや人の状態を、IoTを使うことで把握できるようになります。自宅のドアの施錠を出先で確認したり、車やスマホの位置情報を知ることは、IoTによってモノの状態を把握できるということです。

モノの自動操作

モノの状態を把握するだけでなく、スマホなどの端末を利用し、モノの自動操作が可能なこともIoTの特徴です。例えば、その日の気温によってエアコンを自動起動させ、空調を管理することがきます。

モノ同士の通信

モノ同士の通信もIoTにおいて重要な概念です。人を介在せず、モノとモノが自動でデータ交換を行うことで、スピーディーな判断とアクションを実行できます。例えば自動運転車の分野では、信号機のデータを自動車が受信して速度を調整をしたり、道路の混雑具合を共有し待ち時間を調整する取り組みが進められています。さまざまな分野で期待されている無人化や自動化のシステムは、モノがインターネットでつながりあうIoT基盤が欠かせません。

さまざまな分野で広がるIoTの活用事例

ここからは、既にさまざまな分野で導入されているIoTの活用事例について紹介します。

事例(1) スマートロックによる入退室履歴を記録し、従量課金型のコワーキングスペースを実現

株式会社コミュニティコムでは、入退室管理から請求まで無人で一括管理できるサービス「むじんLOCK」を提供しています。ドアに設置したスマートロックと連携した非接触型のサービスで、登録ユーザーの入退室記録に基づき、請求から決済・入金までの情報処理をコンピューターが実行、一括管理を可能にしました。また、このIoTシステムを導入することにより、従量課金型のコワーキングスペースの無人化・省人化運営を実現しています。

事例(2) 3次元データを活用し精度アップ受注から試作品の納品までの時間を大幅に短縮

自動車部品の開発、製造および販売を行うApex株式会社では、IoT技術の導入により、後付け部品の3次元データ制作から試作品製作までをトータルに提供する新ソリューションサービス「ダイレクト切削加工」を構築しています。従来の手作業による部品の試作品製造から3次元測定データの活用により、劇的に試作品の精度が高まり、試作品製造時間も大幅に短縮し納期を短くすることができたといいます。今後職人の高齢化で製造スキルをもつ人材不足が見込まれている中、属人的な加工スキルに頼らない試作品製造が付加価値となり競合他社との差別化につながっているそうです。
(参考:経済産業省関東経済産業局「中小ものづくり企業IoT等活用事例集」)

事例(3) ワイン試飲から味覚解析を行い、来店客の嗜好にあった最適なワインを提案

伊勢丹新宿本店では、ワインの試飲で味覚解析を行い、来店客の嗜好にあった最適なワインを提案する「SENSYソムリエ」を導入しています。来店客が3種類のワインを試飲しタブレットのアンケートに答えていく形で入力すると、その人の嗜好にあった最適なワインを提案するシステムです。従来、ソムリエや販売スタッフの知識からアドバイスしていたワイン選びにIoT技術を用い、味覚という主観的なデータを解析できるようにしたことで、顧客満足度向上にもつなげている事例です。
(参考:近畿経済産業局「IoT等を活用した食関連サービス事例集」)

多分野で広がるIot活用は、メリットもさまざま

IoTは世界的に注目を集めている技術革新で、日本でも多分野での活用が広がっています。モノとインターネットがつながることで今後も新たなサービスの創出や、利便性の向上が期待されています。

今回の記事を参考に、IoTへの理解を深め、事業への導入を検討してみてはいかがでしょうか。