コラム

DXの課題とは。DX推進のための課題解決方法や先進事例を紹介

近年、DXに取り組む企業が増加しています。しかし、DX推進過程でいくつかの課題が立ちはだかり、成果を出せないと悩む企業も多いようです。

今回の記事では、多くの日本企業が抱えているDX推進時の課題についてまとめ、課題の解決方法やDXの成功事例を紹介します。

海外と比較した日本のDX取り組みの現状

独立行政法人日本貿易振興機構が公開した「世界デジタル競争力ランキング2022」によると、日本は総合ランキング29位という結果でした。上位5カ国は、デンマーク、米国、スウェーデン、シンガポール、スイスが続き、東アジアの国・地域では、韓国が8位、台湾が11位、中国が17位です。日本は一部の項目では高い評価を得たものの、「ビッグデータ活用・分析」「ビジネス上の俊敏性」などの項目では調査対象国・地域の中で最下位となっています。

また、一般社団法人日本能率協会が発表した「日本企業の経営課題 2022」によると、DX推進に取り組んでいる企業は全体の約5.5割ということです。その内、DXの成果について「おおいに成果が出ている(2.6%)」「出ている(14.3%)」もしくは「ある程度出ている(53.8%)」と回答した企業を合わせると、全体で約7割という結果です。

この結果から、日本企業においてDXの取り組みは着実に広がりつつありますが、多くの企業がDX推進の途上であることがわかります。

(参考:独立行政法人日本貿易振興機構「世界デジタル競争力ランキング、日本は29位に低下」)
(参考:一般社団法人日本能率協会「日本企業の経営課題 2022」)

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」

「2025年の崖」とは、経済産業省が発表した「DXレポート」で用いられている用語です。既存のITシステムの課題を克服できず、DXを推進できなかった場合、2025年以降に懸念される巨大なリスクを指します。

仮に日本の各企業で、DXを推進できなかった場合の経済的な損失について、最大で年間12兆円と算出し、「2025年の崖」として警鐘を鳴らしています。この「2025年の崖」を回避するため、DXの推進が強く求められています。

(参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」)

関連記事:「「2025年の崖」とは。DXレポートによる対応策と企業ができることを簡単に解説

DX推進における日本企業の課題

日本企業でDXを進めるには、次のような課題があります。

<課題1>DXに対する経営戦略が不透明

DXとは、単なるIT技術の導入や局所的な業務改善ではなく、デジタル技術を活用し、ビジネスや社会に変革・改革をもたらすことを指します。

そのため、企業でDXに取り組む場合には、「DXで何を成し遂げるのか」という、明確なビジョンや経営戦略が不可欠ですが、これらが不透明になってしまっている企業が多いようです。

<課題2>DX推進人材の不足

現在、多くの企業で「DX推進に関わる人材の不足」が課題となっています。

DXを推進していくためには、デジタル技術に精通している人材はもちろん、プロジェクトマネジメントのできる人材も必要となります。どの企業でもDX人材の獲得が急務となっているため、採用だけではなく人材の育成にも取り組んでいく必要があります。

<課題3>現行システムの維持・管理にコストがかかる

DX推進に立ちはだかる課題の一つに、多くの日本企業で使用しているシステムの老朽化・ブラックボックス化が挙げられます。

経済産業省のまとめでは約8割の企業が老朽化したシステムを抱えており、約7割の企業で老朽化したシステムがDXの足かせになっていると評価しています。このような老朽化している現行システムの維持・管理に膨大なコストをかけることは、リスクを孕む上、戦略的なIT投資を妨げる原因となりえます。

DX推進の課題解決方法とは

上記のDX推進を阻む課題について、解決方法を解説していきます。

DXに対する経営戦略を明確にする

トップダウンで、DXに対する経営戦略を明確にし、全体に共有することで、社員にDXの目的と経営者の考えが伝わり、DX推進に巻き込みやすくなります。また、ビジョンを決定することで、既存のシステムや業務プロセスにどのような課題があるのかを判明し、DXのための改善策を立てやすくなります。

DX推進人材の育成・確保

DX推進人材の確保には、「外部から採用」「社内人材の育成」「アウトソーシング」の3つの方法が考えられます。

まず、DX推進のための人材を採用することで、人材不足を解消できる可能性があります。特に、エンジニアやプログラマーなど高度な知識を持った人材は、育成に時間がかかることから外部からの採用を検討するとよいでしょう。

しかし、DX人材は全体数が不足しているため、採用と同時に社内人材の育成も進めていくことが理想的です。自社での育成が難しい場合には、ベンダー企業への出向や外部の研修・勉強会の活用、資格の取得推奨をするなど、社員のスキルアップをサポートする制度を整えることもDX人材育成につながります。

また、アウトソーシングを行い、ITコーディネータやITベンダーにDX推進を依頼することでも人材不足は解消できるでしょう。ただし、「アウトソーシングに丸投げ状態」になってしまっては、DXによる自社ならではのサービスの創出、競争力の強化につなげることは難しいでしょう。アウトソーシングする場合でも、自社の社員の中にDXに関する知識を持った人材が必須です。

レガシーシステムの刷新を図る

レガシーシステムとは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化したシステムを指します。レガシーシステムが残存することで保守や運用にコストがかかり、新たなシステム導入への投資ができない状態であることがDX推進の大きな課題です。

レガシーシステムを刷新するためには、まず現在の情報資産を分析・評価する必要があります。既存システムの「見える化」を行い、自社のDXを推進していく上で妨げになるレガシーシステムについては刷新を図り「攻めのIT投資」に移行できる体制を構築しましょう。

関連記事:「「攻めのIT」と「守りのIT」とは?DX推進に必要な2つのIT投資を理解しよう

DXの課題を解決した事例

ここからは、DXの課題を乗り越え、ビジネスモデルの変革や新たなサービスの創出に成功している事例を紹介します。

製造業:株式会社IHI

株式会社IHIは、重工業を主体とする総合重工業メーカーです。コロナ禍による業績悪化からの回復を図るため、DXを推進し、デジタルを活用したビジネスモデル変革を進めています。

具体的には、自社開発したIoTプラットフォーム「ILIPS」による製品・設備のデータを収集・分析や、顧客情報を共有する「カスタマーサクセスダッシュボード(CSD)」を構築しビジネスモデルの改革に取り組んでいるそうです。

同時にDX人材育成のため、DXリテラシーとスキルの向上を図る教育やDXリーダー間のネットワーク構築を行い、「データアナリスト研修」「AIコンテスト」の開催なども実施しています。

(参考:株式会社IHI「IHIが「DX銘柄2022」に選定~デジタルを活用したビジネスモデル変革が評価~」)

運輸業:SGホールディングス株式会社

SGホールディングスは、佐川急便などの宅配事業およびロジスティクス事業などを展開する総合物流企業グループです。DXにより業務効率化、従業員の負担を軽減し、消費者へ商品を届けるまでの時間を短縮することで、顧客満足度を向上させるDXの取り組みを実施しています。

具体的には、「伝票情報デジタル化による配達ルート最適化」や、荷物とドライバーのマッチング率、稼働率、積載率の向上を可能とする「TMS(輸配送管理システム)強化」により、ビジネスを拡大しています。

(参考:SGホールディングス「経済産業省・東京証券取引所主催『DX銘柄2021』に当社が選定されました!」)

製造小売業:株式会社ユニメイト

株式会社ユニメイトは、レンタルユニフォーム事業を主軸に、生産・販売・企画やクリーニングまでを手がける企業です。「ユニフォーム・テクノロジー・オペレーション」の3つの要素を融合させ、新たな価値の創出に取り組んでいます。

AI画像認識を活用した自動採寸アプリを開発し、対象者の背面・側面の写真と基本データ(身長・年齢・体重・性別)から最適なユニフォームサイズがフィードバックされる仕組みを構築。サイズ交換などの作業負荷とコストの削減を実現し、返品や廃棄を少なくすることで環境保全にも貢献しています。

(参考:株式会社ユニメイト「AI×R Tailor(エアテイラー)」)

DXの課題を解決するITツールの具体例

デジタル技術の活用により、新たなサービスの創出やビジネスモデルの変革を可能にするDXですが、中小企業や小規模事業者がDXを推進する際には、多くの課題に直面し成果を出すことが難しい場合もあります。

そのような場合には、一からサービスを開発するのではなく、既存のITツールを導入しDXを徐々に進めていくことも可能です。

施設運営のDX課題解決には「むじんLOCK」

株式会社コミュニティコムは、施設運営のDXを進めるITツールとして、スマートロック連携課金決済システム「むじんLOCK」を開発。

ドアに設置したスマートロックシステム「むじんLOCK」により、登録ユーザーの入退室記録に基づき、請求から決済・入金までの情報処理をコンピューターが実行し、一括管理を行えます。

「むじんLOCK」を導入することで、スペースのDXを推進し、施設運営の無人化・省人化という新たなサービスを創出しています。

DXの課題を一つずつ解決し、自社ならではのDXに取り組もう

今回は、日本が抱えるDXの課題とそれに対する解決策について解説しました。DXに取り組むには課題も多くありますが、DXを推進することで自社の競争力を高め、新たなサービスの創出やビジネスモデルに変革を起こすことが可能になります。

本記事を参考に、DXの課題に対する対策について理解を深め、自社ならではのDXに取り組んでみてください。