コラム
【DX事例】DX推進による成功事例15選。業界別の取り組みや導入のポイントを解説

あらゆる産業分野で、デジタル活用を通じた変革が必要とされるようになったことで、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉も一般的になりつつあります。DX推進の重要性を感じているものの、「自社でどのようにDXを推進すればよいのかわからない」と感じる企業も多いのではないでしょうか。本記事では、さまざまな業界における成功事例や、DX導入のポイントなどを解説します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)とは、広義で捉えると2004年にスウェーデンにあるウメオ大学教授のエリック・ストルターマン氏によって提唱された「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」という概念です。

もう少し狭い範囲の意味で捉えると、ビジネスにおいては、経済産業省が2018年12月に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」によって、以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

【参考:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0」】

ビジネスでは、変化が大きい時代に対応していくために、企業競争力や顧客ニーズへの対応力を強化することが重要と言われています。DXを推進することでデータやデジタル技術の活用を軸に、新しい製品やサービス、ビジネスモデルなどを生み出したり、既存ビジネスの生産性向上やコストの削減を図ったりすることが可能となるでしょう。一方で、従来のビジネスを大きく変えることは難しく、本格的なDX推進に踏み出せているのは一部の先進的な企業に留まっているという現状もあります。

では、実際にDX推進をしている企業ではどのようなことを行っているのでしょうか。ここからは、さまざまな分野でのDX推進における成功事例をご紹介します。

海外におけるDXの成功事例

海外では、すでに多くの企業がDXを行い成功しています。その事例を見ていきましょう。

Uber

Uber(ウーバー)は、利用者が目的地を指定し配車できる自動車配車サービスです。日本でも「Uber Eats」などを展開しています。専用のアプリは利用者が行きたい場所を指定すると、ドライバーの情報や現在地、配車までの時間などが表示され、料金決済もアプリから行うことが可能。目的地の説明や料金支払いなどの時間を効率化できています。

Netflix

動画配信サービスを行うNetflix(ネットフリックス)は、顧客の維持や新たな集客を見据えてDXを行い、独自のプラットフォームを構築しました。これにより、創業時に行っていた宅配型DVDレンタルサービスから、動画配信サービスという新たなビジネスモデルに転換し、これまでの顧客データを活用したサービスを展開しています。

Coloplast

Coloplast(コロプラスト)は、デンマークに本拠を置く医療用装具の開発や製造を行う企業で、人工肛門などのストーマ用装具の知見が高いことで知られています。人工肛門保有者(オストミー患者)の負担軽減や生活の質を向上させるため、自社製品と連動した健康管理アプリを開発。専門医と連携し、アプリで患者のデータ追跡を行い健康的な生活習慣が身につくようサポートをしたことで、患者の通院回数を削減することに成功しています。

日本国内におけるDXの成功事例

日本国内でも、さまざまな企業がDXを推進しています。業界別に成功事例を見ていきましょう。

【地方自治体】富山市

富山市とNECは、さまざまな世代・立場の人が地域内で共生していけるまちづくり「スマートシティプロジェクト」を実施しています。データ連携によるサービスを構築しており、小学生にGPSを持たせて登下校を見守りながら、通学ルートのデータを活用して学童設置などの政策決定のエビデンスとして利用しています。また、富山大学の全学部の学生に対してデータサイエンスを履修できる環境を整備し、データを活用できる人材の育成などを行っています。

【製造業】クボタ

農機メーカーのクボタは、農家の高齢化が進む中、農地の適切な管理や品質の維持・向上、コストと労働負荷の増大などさまざまな課題を抱える日本の農業を支えるため、ロボット技術やICTを活用した「スマート農業」の普及に力を入れています。農機の自動化により労働負荷を低減し、作業の効率化を図っている他、データを活用した最適な作付計画の提案などノウハウの見える化を行い、農業経験の浅い人でも農業に参入しやすいよう支援をしています。

【物流】佐川急便

物流業界大手の佐川急便でもDXが進んでいます。配達する品物の個数が増加傾向なのに対し、再配達の増加による運送側の労働力不足などの課題を抱えていました。そこで、これまで人手で行っていた物流センター内の商品の取り出しや梱包などの作業の一部にロボットを導入。これにより、他の作業に人員を投入できるようになり、効率化を実現しています。また、DXを推進するための社内システムの開発や保守、運用の内製化を図り、コスト削減やエンジニアの育成などの大きな成果をあげています。

【教育】広島大学

広島大学では、教員に関するさまざまなデータを蓄積し、全教員の教育や研究における専門性を可視化できる環境を整えました。これにより、研究と教育の両面において成果を出すため、適切な人事判断を行う客観的なエビデンスとして活用していくことを目指しているようです。

【金融】鹿児島銀行

鹿児島銀行では、独自のキャッシュレス決済の開発を通じて地域振興の実現に取り組んでいます。鹿児島県では決済端末の普及があまり進んでおらず、キャッシュレス決済利用額比率が低いという課題を抱えていました。鹿児島銀行が地元ならではの機能を実装したアプリの開発を行ったことで、地域活性化につながっているようです。

【保険】ソニー損害保険

損害保険会社のソニー損害保険は、スマートフォンで計測した運転特性データを活用し、事故リスクの推定からその結果に応じた保険料のキャッシュバックを行う「運転特性連動型自動車保険」を販売しています。AI技術を活用し、事故リスクの低い運転をするドライバーにはキャッシュバックのインセンティブを提供することで、ドライバーの事故リスクの低減を目指すとともに、交通事故の少ない社会の実現を目指しているようです。

【建設】鹿島建設

大手総合建設会社である鹿島建設は、建築工事に関わるあらゆる生産プロセスのDXに取り組んでいます。ICTを活用したロボット技術の開発や現場管理ツールの導入により、人と機械が協働して生産性を向上することを目指しているそうです。資材運搬などの重労働は機械が担うことで、特殊な施工や複雑な調整を必要とする作業に人員をより投入することが可能となり、業務の効率化を実現しています。

【不動産】ADインベストメント・マネジメント

不動産投資信託の資産運用会社であるADインベストメント・マネジメントは、これまで基幹システムに蓄積してきたデータを活用できる情報体制を構築しました。これにより、属人化していた業務の時間短縮や、計数管理の効率化などを実現しています。

【医療】大塚製薬

医薬品の製造・販売などを行う大塚製薬では、NECと共同で専用の通信機能付き服薬支援モジュールを開発し、服薬タイミングの通知や患者の服薬の履歴確認などをサポートしています。また、日本IBMと合弁会社「大塚デジタルヘルス」を設立し、データ分析のソリューションの開発や販売を進めています。人工知能技術を取り入れた電子カルテデータを活用し、患者に合った治療計画の立案などに役立てています。

【小売業】ローソン

日本のコンビニエンスストアチェーン大手のローソンは、働き方改革や人手不足などの課題から省人化を行い、ホスピタリティーにつながらない作業などはIT技術を積極的に活用しています。DXを進めて業務を効率化することで、店員が顧客との会話を通して町の見守り機能を果たせるよう取り組んでいるそうです。

【IT】メルカリ

フリーマーケットアプリを運営するメルカリは、従来のネットオークションのようなPCを利用するのが前提のサービスから、スマートフォン完結型の新しいサービスを提供しています。DXを進めてスマホ1台で手軽に売り買いできるビジネスモデルを構築し、利便性の向上につなげています。DXを実現したことにより、新たなビジネスを生み出した成功事例と言えるでしょう。

【農業】ビビッドガーデン

ビビッドガーデンは、生産者が消費者に生産物を直接販売できるプラットフォーム「食ベチョク」を提供しています。卸や小売店を介さないため、規模が小さい生産者でも利益を得やすい仕組みとなっています。消費者も、生産者の顔が見えることで購買に対する安心感を得られる他、生産者の栽培のこだわりや、消費者が食べた感想などをプラットフォーム上でやり取りできるため、品質の向上も期待できるサービスです。

DXを推進するメリット

DXを実現することで、企業だけでなく社会全体に大きなメリットがあります。

働き方改革の実現

DXを行うことで、働き方改革を促進することができます。業務の効率化により残業時間の削減などが期待できるでしょう。また、Web会議ツールやクラウドストレージなどのITツールを活用してテレワークを実施することも可能になり、より多様な働き方を実現できます。

業務の効率化による生産性の向上

DXの推進により業務効率化が進むことで、生産性の向上にもつながります。これまで人手で行っていた作業を自動化することで作業効率を上げられる他、ヒューマンエラーの抑制にもつながり、品質向上が期待できるでしょう。また、これまでアナログで行っていた作業や時間がかかっていた業務などをIT化していくことで、従業員がより付加価値の高い業務に注力することも可能です。

人材不足の解消

少子高齢化社会の影響で人手不足に悩む企業も少なくありません。従業員が行わなくても済む業務などを積極的にIT化していくことで作業に必要な人員を削減でき、より従業員が必要な業務に人員を充てることが可能です。限られた従業員数であっても、業務を遂行できる仕組みづくりができるでしょう。

新しいビジネスの創出につながる

DXを実現し企業の生産性を上げることで、市場における競争力を高めることができます。これにより、新たなビジネスを創出できる可能性が高まるでしょう。DXによってこれまで取得できなかったデータを収集・分析できるようになるため、今まで見落としていたビジネスチャンスが見つかるかもしれません。

DXを成功させるポイント

DXを成功させるには、以下の4つのポイントがあります。

既存システムの見直し

日本のITシステムは個別のシステムを複数運用しているなど、複雑化しているケースが散見されます。このため、システム同士の連携ができず、データ活用の妨げになっていることもあるでしょう。既存のシステムを見直し、一貫性のあるシステム構築を進めることでより有効なデータ活用が可能となります。

長期的な計画を立案

DXを行うためには企業全体を巻き込んで進めていく必要があるため、長期的な視点を持った計画を立てることも重要です。一般的に、DXを完了させるのは3年から5年かかると言われているため、企業の労働力などがどのように変化するのか予測しながら計画を立案し、部署や案件ごとにDXの優先度をつけて実施していくとよいでしょう。

経営者や取締役などの参画

DXの推進は、企業の文化や風土、新たなビジネスの創出など企業全体に影響を及ぼします。このため、経営者や取締役などの経営陣が、自社のDXによりどのような価値を生み出し、ビジネスを変革させていくのかという指針を示すことが重要です。前述のように、DXを完了させるのは数年がかりのプロジェクトになることを見据えて、経営陣も積極的に参画していきましょう。

DX推進人材の確保と育成

DXに必要な先端デジタル技術を扱うことができるIT人材は不足しており、社内にリソースがない企業も少なくないでしょう。このため、DXに関する豊富な知識や経験を有したIT人材の採用や育成も必要です。

事例を参考にDXを推進しよう

企業が他社との競争で生き残るには、DXを実現して新たな価値の創造や付加価値の向上を行うことが必要です。その必要性を感じていながらも、実際にはDXに取り組めていない企業も多いのではないでしょうか。今回紹介したさまざまな業界の事例のように、DX推進に成功した例も多くあります。まずは、自社の課題を把握することから、自社のDXに取り組んでいきましょう。