コラム

デジタル改革関連法とは。成立の背景や6法の内容などをわかりやすく解説

デジタル改革関連法とは

デジタル改革関連法とは、デジタル化により行政システムの統一を推進し、利便性を向上させるための法律です。本記事では、2021年5月12日に可決された、デジタル改革関連法について、わかりやすく解説します。

2021年5月可決「デジタル改革関連法」とは

デジタル改革関連法とは、一つの法律ではなく、デジタル社会の実現を目指すための、次の6つの法律のことを指します。

(1)「デジタル社会形成基本法」
(2)「デジタル庁設置法」
(3)「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」
(4)「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」
(5)「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」
(6)「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」

デジタル改革関連法成立の背景

デジタル改革関連法が成立した背景には、データの多様化や大容量化が進み、社会的にデータの活用が不可欠となったことが挙げられます。特に、新型コロナウイルスの感染拡大対策として注目された政府から国民への給付金支給に伴う行政手続きでは、行政のデジタル化の遅れが顕在化し、立法を後押ししました。行政におけるスムーズなデータ活用とそのための課題解決が必須となり、2021年5月12日に参院本会議で可決し成立。デジタル改革関連法には、改革の司令塔となる、デジタル庁の設置根拠や役割を規定した「デジタル庁設置法」が含まれ、2021年9月にデジタル庁が新設されました。

デジタル改革関連法6法の内容

デジタル改革関連法は、前述した6つの法律で構成されています。それぞれの法律の全体像と、目的・内容について解説します。

(1)「デジタル社会形成基本法」

デジタル社会形成基本法は、デジタル社会の形成による日本経済の持続的かつ健全な発展と国民の幸福な生活の実現等を目的とする法律です。以前の「IT基本法」に替わる法律であり、デジタル改革に取り組む基本理念を制定しています。
(参考:デジタル庁「デジタル社会形成基本法の概要」)

(2)「デジタル庁設置法」

デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進するため、デジタル庁を設置することを目的とした法律です。デジタル庁の組織体制や設置根拠、役割を規定しています。デジタル庁は各省庁への勧告権などを有しており、デジタル社会の形成に関する司令塔として、国と地方公共団体の情報システムの統括・管理を行うための権限が与えられています。

デジタル庁の主な業務としては、マイナンバーカードに関する業務の地方公共団体からの移管業務や、各府省が共通で利用するシステムや地方公共団体が利用するプラットフォームについてのシステム整備を行うなど、国と地方公共団体の垣根を越えた総合的な情報システム部門となります。
(参考:デジタル庁「デジタル庁設置法の概要」)

(3)「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」

略称で「デジタル社会形成整備法」とも表記されます。個人情報の保護に関する法律等について整備を行い、地方公共団体毎に異なっていた制度を全国的な共通ルールにすること、マイナンバーカードの発行・運営体制の強化を内容としています。また、押印を求めていた行政手続きについて押印不要とし、書面交付が求められていた手続きについては電磁的方法(PDFファイルなど)での交付も可能とする点など、これまでの行政業務に大きな影響を与える法律です。
(参考:デジタル庁「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の概要」)

(4)「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律」

略称で「公金受取口口座登録法」とも表記されます。公的な給付の申請手続きの簡素化や給付の迅速化を目的とし、公金給付に登録済みの口座を利用可能とする法律です。
(参考:デジタル庁「公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律の概要」)

(5)「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」

略称で「預貯金口座管理法」とも表記されます。口座預貯金者の意志に基づき、マイナンバーを利用した預貯金口座の管理を希望することにより、金融機関がその口座を管理可能とすることを目的とする法律です。
(参考:「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律の概要」)

(6)「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」

略称で「自治体システム標準化法」とも表記されます。法律の主な目的は地方公共団体毎に異なっていた情報システムの標準化をすることです。児童手当や住民基本台帳から生活保護まで、多種多様な行政サービスを対象とし、2025年度末を期限に、自治体ごとに異なる行政システムの統一を目指しています。
(参考:「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」)

デジタル改革関連法施行やデジタル庁開設における国民への影響

デジタル改革関連法は、社会・経済のみならず国民へも影響を与える可能性のある法律と言えます。法の施行やデジタル庁が設置されたことにより、具体的にどのような影響があるのでしょうか。現時点で考えられる国民にとってのメリットをまとめます。

マイナンバーカードの利便性向上

法律が成立したことでマイナンバーカードの利便性が向上し、活用シーンが増えることが想定されています。既に2021年10月から健康保険証としてのマイナンバー利用の本格運用が始まりました。今後、在留カードや教員免許、学生証といった各種証明書としての利活用なども想定され、マイナンバーの利用範囲は更に広がっていくことでしょう。

また、マイナンバーカードの機能のうち、電子証明書をスマートフォンに搭載し、各種の行政手続きをスマートフォンで完結できるようになります。例えば、引越しの際の住所変更なども、スマートフォンからの操作により簡便化される見込みです。公的給付に関しても、以前よりも迅速な給付を受けることができるようになるでしょう。

行政サービスの効率化

マイナンバーを軸としたデータ連係がより円滑になり、行政サービスの利便性が向上すると考えられます。行政はデータを活用し、これまでよりも各種の行政手続きがスピードアップし、自治体の窓口が混雑・混乱することなくサービスを享受できるでしょう。

また、各種機関や地方公共団体などが保有するデータが共有され、データを活用した民間ビジネスや行政サービスの創出にも期待が寄せられています。行政および民間のDX推進を加速させることも、このデジタル改革関連法の目的であり国民のメリットです。

「2025年の崖」を見据えたデジタル社会の実現が重要に

デジタル改革関連法は、2021年の通常国会で大きな注目を集めた議論でした。デジタル改革関連法成立によって、日本社会がデジタル化に向けて大きく舵をとることが可能になり、国際競争力低下による経済的損失に警笛を鳴らす「2025年の崖」への有効な対策の一つとして、法律の内容の実現と社会変革が期待されています。

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