コラム

ワーケーションとは?定義やメリット・デメリット、導入のポイントなどを解説

ワ―ケーションとは

近年、ワーケーションという働き方が注目されています。働き方改革などでリモートワークが普及する中、場所にとらわれない新しいワークスタイルを取り入れたいと考える企業も多いのではないでしょうか。本記事では、ワーケーションのメリット・デメリットや、導入する際のポイント、企業の導入事例などを解説します。

ワーケーションとは

ワーケーションは「work(ワーク)」と「vacation(バケーション)」を組み合わせた造語です。観光地への旅行や、帰省などの休暇先でリモートワークを行うことをいいます。ワーケーションは、普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみながら仕事を行うワークスタイルとして、2000年代にアメリカを中心に取り入れられてきました。近年では働き方改革を推進する日本でも、ワーケーションの認知度は高まっています。
(参考:国土交通省観光庁「「新たな旅のスタイル』ワーケーション&ブレジャー」

国がワーケーションを推進する背景

日本の働き方改革は、2016年に政府が「働き方改革実現推進室」を発足し、労働環境を見直し、働く意欲を持つすべての人が働きやすい社会をつくるために進められてきました。2019年には有給休暇の取得義務化や時間外労働の上限規制などが定められ、休暇の取得と仕事の両立に課題を感じる企業もあるでしょう。こうした企業の課題感などから、政府は働き方改革の一環として新たな旅のスタイルであるワーケーションを推進しています。

株式会社矢野経済研究所が2021年3月に公表した調査結果によると、2020年度以降ワーケーションの国内市場規模は増加すると予測されており、2025年度には3,622億円と、2020年度比5.2倍に拡大すると見られています。企業がワーケーションを導入しやすくなるよう補助金の交付なども進んでおり、今後さらにワーケーションを取り入れる企業は増加するでしょう。
(参考:株式会社矢野経済研究所「2020年度の国内ワーケーション市場規模を699億円と予測」)

ブレジャーとは?ワーケーションとの違い

ワーケーションと同様にブレジャーという働き方も注目されています。ブレジャーとは、「Business(ビジネス)」と「Leisure(レジャー)」を組み合わせた造語で、出張先などで滞在期間を延長し余暇を楽しむことを指します。ワーケーションが余暇を楽しみながら働くことに対して、ブレジャーは従来の出張業務の前後に有給休暇を組み合わせて、仕事とは別に余暇を楽しむという違いがあります。

ワーケーションに向いている職種

ワーケーションに向いているのは、以下のような職種です。

  • ・エンジニア
  • ・デザイナー
  • ・マーケター
  • ・ライター など

パソコンとインターネット環境があれば、場所を問わずに仕事ができる職種では、ワーケーションもしやすいでしょう。一方で、顧客に直接対応しなければならない接客業や、現場作業が必須な製造業などの職種は、ワーケーションに不向きです。

企業側のメリット・デメリット

ワーケーションを導入することは、企業にとってどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

企業側のメリット

企業側のメリットには以下のようなものが挙げられます。

  • ・仕事の質の向上、イノベーションの創出
  • ・帰属意識の向上
  • ・人材の確保、人材流出の抑止
  • ・有給休暇の取得促進
  • ・CSR、SDGsの取組みによる企業価値の向上
  • ・地域との関係性構築によるBCP対策
  • ・地方創生への寄与

ワーケーションを導入することは、従業員が柔軟に働ける環境整備につながります。働きやすい環境を整えることで、人材の確保や流出防止の他、従業員の仕事の質向上によるイノベーションの創出などが期待できるでしょう。また、ワーケーションを通して地域との関係性が構築できることで、緊急事態時におけるリスクマネジメントなどにもつながります。

企業側のデメリット

一方、企業にとって以下のようなデメリットもあります。

  • ・セキュリティリスクの上昇
  • ・コストの発生
  • ・労働管理の煩雑化

遠隔地で仕事をするため、オフィスに出社するよりもセキュリティリスクを考慮する必要があります。顧客情報の流出を防ぐ対策や端末の管理方法など、従業員に任せきりにせず事前に企業側でリスクを洗い出し、対策を検討しておきましょう。また、ワーケーションを導入するには宿泊施設の費用やインターネット環境の運用費などコストがかかるため、事前にどの程度のコストが発生するのか試算しておくとよさそうです。

また従業員の労働管理が煩雑化して、勤務の実態が正確に把握しにくい点もデメリットと言えます。チャットツールなどを導入し、ワーケーション中の働き方について事前に従業員と認識を合わせておきましょう。

従業員側のメリット・デメリット

次に、従業員側のメリットとデメリットも見ていきましょう。

従業員側のメリット

従業員側のメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • ・働き方の選択肢拡大
  • ・ストレス軽減やリフレッシュ効果
  • ・モチベーションの向上
  • ・リモートワークの促進
  • ・長期休暇が取得しやすくなる
  • ・新たな出会いやアイデアの創出
  • ・業務効率の向上

ワーケーションを導入することで従業員の働き方の選択肢が広がる他、休暇を通してリフレッシュすることもできるため、ストレスの軽減やモチベーションの向上、業務効率の向上にもつながるでしょう。また、ワーケーション先で出会う人とのコミュニケーションを通して、新たなアイデアも生まれるかもしれません。

従業員側のデメリット

従業員側のデメリットは以下のようなものがあるでしょう。

  • ・オン・オフの切り替えが難しい
  • ・作業環境が整っていないことがある
  • ・可能な職種・仕事内容が限られる

ワーケーションは旅行先など普段と異なる環境で働くため、人によってはオン・オフの切り替えが難しいことがあるでしょう。「休まず一日中仕事をしてしまい、リフレッシュできない」ということがないよう、企業側でワーケーションの際の就業ルールを決めておくことが重要です。また、場所によっては通信環境が整っていない可能性もあるため、事前に現地の通信環境を確認しておきましょう。

受け入れ地域のメリット・デメリット

ワーケーションを受け入れる地域や自治体にとっては、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょう。

受け入れ地域のメリット

ワーケーションを受け入れる地域のメリットには、以下のようなものが挙げられます。

  • ・平日の旅行需要の創出
  • ・交流人口および関係人口の増加
  • ・関連事業の活性化、雇用創出
  • ・企業との関係性構築
  • ・遊休施設等の有効活用

ワーケーションは一般的に平日に実施されることが多いため、平日の観光需要に課題を抱えている自治体にとっては、観光・旅行需要を拡大できる可能性があるでしょう。また、ワーケーションによって地域の交流人口が増えることで、地元の関連事業が活性化し新たな雇用の創出につながることも期待できます。この他、地域でこれまで使われていなかった遊休施設などをワーケーション施設として提供し、企業に有効活用してもらうこともできるでしょう。

受け入れ地域のデメリット

受け入れ地域のデメリットには、以下のようなものがあるでしょう。

  • ・wifiなど環境整備に伴うコスト負担
  • ・感染症の蔓延・拡大リスクの増加

ワーケーションを受け入れるには、高速かつ安全にインターネットに接続できるwifi環境の整備が必要です。宿泊施設やコワーキングスペースなど、さまざまな施設の環境整備にかかるコストの負担が伴います。また、ワーケーションに限らず他地域からの訪問者を積極的に受け入れることは、感染症などの蔓延・拡大のリスクを伴います。感染防止対策を徹底するなど、地域住民に対する十分な配慮も必要となるでしょう。

ワーケーションの導入に必要な準備

ここからは、ワーケーションを導入する際に必要な準備について解説します。

①モニターツアーなどを活用し、実体験に基づいた導入計画を立てる

近年では、さまざまな自治体がワーケーションのモニターツアーを実施しています。実際のワーケーションを体験することで地域の魅力が知れる他、自社でワーケーションを導入する際の課題などに気付くこともあるかもしれません。ツアーでの体験をもとに導入計画を作成すれば、ワーケーション制度もスムーズに導入できるでしょう。

②ワーケーションの導入範囲の設定

次に、ワーケーションの導入範囲を決めます。業務や部署、役職など、ワーケーション対象となる従業員や、制度取得が可能な時期などについて検討しましょう。最初から全社に導入するのではなく、まずリモートでもスムーズにコミュニケーションがとれる業務や部署を対象とし、徐々に範囲を広げることで運用面での負担が削減できます。取得可能な時期については、まずは夏季休暇の期間や閑散期のみなど、限定した期間から始めるとよいでしょう。

③就業規則の変更

ワーケーション中の業務に関する就業規則を整えます。ワーケーションで行うことができる業務の範囲や、禁止行為など、基本ルールを整備しましょう。また、ワーケーションを許可制にする場合、申請や決済方法、承認フロー、発生した経費の負担などについても定めておく必要があります。

④労働時間管理方法の決定

ワーケーションを利用する従業員の意識付けや従業員間の公平性を保つためにも、実労働時間を正確に把握することは重要です。勤怠管理システムやチャットツールなどを使って出退勤時に報告をするなど、労働時間を記録できる体制をつくりましょう。

⑤セキュリティ面の対策

ワーケーション中の情報セキュリティ対策も強化しましょう。遠方へパソコンなどを持ち出すことで紛失や盗難、破損などのリスクがあります。端末や利用可能なネットワーク、資料の持ち出しについてなど、情報セキュリティに対するルールを整備する他、万が一の事態に備えたセキュリティソフトのインストールなど、対策を行う必要があります。

⑥制度についての従業員への周知

②で作成した就業規則を全従業員に周知します。必要に応じて就業規則の説明会を実施することも検討しましょう。ワーケーション制度を利用しやすい職場風土を形成するためにも、特に管理者が制度を理解し、取得しやすいよう働きかけることが重要です。

⑦制度導入後、課題を把握し改善していくフローの構築

ワーケーション実施後にはさまざまな課題が生まれることもあるでしょう。ワーケーションを利用した従業員からアンケートを取るなどして課題を把握し、改善するためにはどのような方法があるのかを検討するなど、より充実したワーケーションを行うためのフローを構築しておくとよさそうです。

企業のワーケーション導入事例

ワーケーションを取り入れている企業の事例を紹介します。それぞれの取り入れ方や効果などを参考に、導入方法を検討してみましょう。

日本航空株式会社

日本航空株式会社では、現場部門と間接部門における有給休暇取得率のアンバランスが課題であったことから、2017年に「休暇型」のワーケーションを導入しました。休暇利用中のテレワークを可能とすることで、「休暇取得後の業務に対する不安」や「長期休暇を取ることへの抵抗感」など、従業員の不安を軽減することにつながり、有給取得率が向上。また、ワーケーション実施日は始終業時間の報告、実施後には勤怠管理システムへの登録と業務の進捗状況の共有などを行うなど、労働時間管理のための工夫も実施しています。従業員からは、「ワーケーションを利用してモチベーションが上がった」などのポジティブな回答が得られています。

日本マイクロソフト株式会社

あえて「ワーケーション」という制度は作らず、働き方の一つとして取り入れている日本マイクロソフト株式会社。もともと「日常」と「特別」を分けて考えず、制度設計からさまざまな選択ができる職場環境を整えています。テレワークの浸透や就業規則の改定などを通して、従業員は自分の判断で臨機応変な働き方ができるようになりました。このため、ワーケーションのような働き方をする従業員も出始め、柔軟な働き方を実現しています。

株式会社ニット

オンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU(ヘルプユー)」を運営する株式会社ニットは、2015年にフルリモート前提で創業した企業です。現在では、約400人の従業員が日本全国・世界33カ国からオンラインで業務を行っています。2021年11月には代表取締役社長を含む5名が2泊3日のワーケーションを実施。複数の従業員と現地で一緒に仕事をしながら寝食を共にすることで従業員同士のつながりを深められた他、日常のパフォーマンス向上にもつながっています。

ワーケーションを導入して企業の生産性向上へ

ワーケーションの導入は、従業員が柔軟に働ける環境整備や、リフレッシュによる業務効率の向上などさまざまなメリットがあります。企業は従業員がスムーズにワーケーションを利用できるよう、就業規則の整備や導入後の課題改善フローの構築など、事前に準備しておくことが大切です。ワーケーション導入企業の事例を参考にしたり、モニターツアーに参加したりして、自社でのワーケーション導入を検討してみてはいかがでしょうか。